宇宙戦艦ヤマトのワープ航法は実現可能?
宇宙戦艦ヤマトのワープ航法
特にワープの時に登場する計器が印象的だった。これは時空上のヤマトの現在地を表示し、時空の歪みによる誤差に注意しながらワープのタイミングを測るものらしい。正式名称があるのか定かではないが、個人的に解釈すれば、「ワープ用時空ナビゲータ」ということにでもなろうか。
科学的考証に挑戦するも...
さて、いよいよワープの科学的解釈に挑戦しよう。アニメの中で述べられていたワープの原理を列挙すると、
(1) 宇宙の時空間は歪んで閉じている。そこで歪んだ時空間に沿って移動するのではなく、そこから飛び出し、最短距離を飛行する。時間軸を通らずに移動する。
(2) 時間の波の頂点から頂点へ移動する。
(3) ワープすべき目的地の時間の波には空間の歪みによるズレができている。ワープを成功させるためには、ズレが0になると同時にヤマトが目的地の時間の波と重なったときにワープする必要がある。このタイミングを外すと、ヤマトが3次元と4次元の間に挟まって宇宙全体を吹き飛ばしかねない。
とこんなところだろうか。まず気になったのは、「時間の波」という用語である。これは「新たなる旅立ち」でもワープの説明に使われていた。ヤマトのワープの原理を知る上で重要なキーワードではないだろうか。しかし時空間に関する書籍を読んでも時間の波という物理学的概念は見つからず、またインターネットを探しても時間の波をちゃんと物理学的に解説しているサイトは発見できなかった。文学的な表現としてこの用語が使われているサイトは山ほどあったのだが...。
う~む、いきなり頓挫してしまった。
そもそも宇宙戦艦ヤマトはご都合主義の固まりのようなアニメである。特攻で散ったはずのヤマトがパラレルワールド(?)で蘇っていたり、死んだはずの艦長が後のストーリーで生き返っていたり。この調子だから、アニメの製作者は科学的な考証などまともにやっているとは思えないのだが。
現実の自然科学と混同してはいけない
柳田理科雄著の「空想非科学大全」(メディアファクトリー, 2003)には宇宙戦艦ヤマトのワープに関しても科学的考証が試みられているが、少々苦しそうだ。まず、「近道」を可能にするような四次元空間などというものが本当に存在するのか、またワープという現象が起こるとしても、それは素粒子レベルの世界の話で、ヤマトのようなデカ物がワープするのはかなり無理がある、とこんな調子だ。
都筑卓司著の「四次元問答」(講談社, 1980)でも宇宙戦艦ヤマトのワープについて触れられているが、かなり否定的。数十光年先にワープすれば、ヤマトの中でも数十年の時間が一瞬にして過ぎ去るはずだ、と述べられており、そもそもこれはSFの世界の話で、現実の自然科学と混同してはいけない、と書かれている。
夢がある話ではあったが、結論はこんなところかも知れない。